僕の勤める会社は、インターネットを媒介とし、そこで何かしらの商品を販売している。
言ってしまえば商売をする上でお客様と直接接することが無い商売だ。
そして僕はその業種でお客様窓口を仕事にしている。
機械を媒介とせず、直接“声”を聞く仕事だ。電話が鳴るたびにストレスは一瞬マックスになる。
今ではネット上で買えないものはないし、受けられないサービスだってほとんど無くなってきている。
保険、金融、すべてネット上で完結させることが出来る。
しかし、電子メールの爆発的な普及で郵便が脅かされていると言うが、ネット上での商売は、窓口をネットに据えただけで、結局はお客様へ提供する商品、サービス、実は何も替わっていない。
残念ながら、ネット上で商売をしている人たちの中には自分たちがサービス業、小売業であることに麻痺し、今では死語だけどIT企業に勤めているという特別感たっぷりの座布団を重ね、高い位置から顧客を見下ろすところがある。
ワン・トゥ・ワンマーケティング。
つい最近までデータマインニングとか言って、顧客の購買行動を分析して数値的に売れる商品を全面に押し出す策が講じられていた。
「あなたが欲しい商品はこれですよね?」
顧客は企業が仕組んだ事に気がつかず、特別扱いを受けている事に満足し、購買行動を起こす。
デパートの外商なんて良い例で「あなた様は特別なお客様でございます!」という演出を売り、来店を促し、そして“ついで買い”を誘発していく。
顧客囲い込みの一番見事な例ではないだろうか。
一方、ロングテールとか言って「売り上げの8割は2割の優良顧客が産み出す。」なんて言う昔からある経験値を否定するように優良顧客ではないとされた8割の層をターゲットに新しいマーケットプレイスを創造していく・・・
でも、本当のところはサザエさんに出てくる三河屋さん、「こんちわ〜、そろそろ醤油が切れる頃じゃないですか?」「あ、ところでおいしいお酒が入ったんですよ、ちょっと高いけど味は保証します!特別な時用に一本いかがですか?」
こういった場合「そうなんだ、じゃぁ一本いただこうかしら?」なんて言うことになる。
サービスを提供する側、される側、実は数値的なものよりもカンや心遣いが一番大事。
さて、本題のクレーム。
先述の通り僕はネットを媒介とした商売をする中で、生の声を聞く立場にいる。
「お互いの顔が見えない」というのは時に大きな罪を生む。
たとえがあっているかわからないけど、たとえば出会い系サイト。
これだけ「悪」の代名詞として取り上げられているにもかかわらず、淘汰されることがない。
おそらくは「僕だけは被害に遭わない」という誰しもが持つ感情を逆手に取り、且つ人間が誰しも持つ微妙な下心をくすぐる商材。
さくらでも、リアルでも、お互いに顔が見えないと言うことが、時に大胆に人を変える力を持つことがある。
僕の勤める会社が提供するサービスは、言ってしまえば嗜好品。でも、嗜好品だからこそ購買側にはこだわりがある。
満足しない商品を与えられたとき、顧客は時に大胆に人が変わる。
お客様窓口をやっていると対応の中で「あぁ、もうこの人からの電話は受けたくない」と思うお客様が常に2〜3人いる。またそう思わせる顧客に限ってマメにコンタクトしてくるものだ。
僕は「戦う」という表現を使う。以前社長に「お客様相手に戦うとは何事だ!」と怒鳴られたことがある。
しかし、お客様窓口とは大小にかかわらず、常にお客様との戦いなのだ。
誰しもが「いや、それはあなたがおかしいよ。」という事であっても、立場が「お客様」で対企業になると堂々と胸を張って主張してくるものだ。
また、頭がいい人になればなるほど屁理屈が多くなってくる。
「私は幾つもの企業に関わり、法律に熟知している。」とおっしゃるお客様なのにサービス利用規約を一切読んでいない。しかも「規約なんてそっちの都合を押しつけているだけだ!」と声を荒げる。
「あらら、幾つもの企業にかかわっているのに売買契約を結ぶ際に約款に目を通さないんですか?
係争になった際、自分が自分で後に感じる不利益であっても目を通さないではんこを押すんですね、たいした懐の深さですね。」
本当であればそう声に出して言ってやりたい。
でも、サービスを提供する側にとっては、サービスを希望する側に従順でなくてはいけない。
「お客様は神様です」なのである。
そこで「座布団を重ねた上から顧客を見下ろしていないか?」と自分で振り返ってみた。そしてストレスが増えた。
僕個人としては「不条理」を顧客へ押しつける事になると認識しつつも、企業として、世間の通例として、そして何より利益の確保として「戦い」を強いられることがある。
もちろん、こちら側、企業側としては戦う可能性のある条項に関してはすべて規約、約款として顧客側へ開示し、同意を得ている。企業として断固として崩してはいけない姿勢がある。
僕は基本的にエスカレーションを行わない。
「あなたじゃ話にならないから上の人を出して。」
これ、よく聞くキーワード。
でもそういった場合僕は「私がお客様窓口の責任者でございます。」と回答し対応している。
それが僕に課せられた責任だから。だって、エスカレーションしたところで回答は変わらないし、顧客対応出来ないと思われるのもしゃくだから。
わがままを言うお客様は星の数ほどいる。
僕はそのお客様を翻し優良顧客に変えていく事を仕事としている。
時にお客様からお礼の言葉をいただく事があり、それが僕のモチベーションになる。
99のクレームより、1のお礼。
そこに僕は満足を感じている。